8/5(金)「チームスマイルpresents “わたしの夢”応援プロジェクトvol.4 『布袋寅泰の目の前で演奏してみないか!」」@私立磐城緑蔭中学校高等学校 取材リポート

2016/08/24

一般社団法人チームスマイルによる、被災地の子供たちを元気づけ、夢の後押しをするための「“わたしの夢”応援プロジェクト」。前回、6月に開催された香川真司選手と清武弘嗣選手のイベントに続き、布袋寅泰さん(ギタリスト)を迎え、『チームスマイルpresents “わたしの夢”応援プロジェクトvol.4「布袋寅泰の目の前で演奏してみないか!?」』が、福島県いわき市内にある私立磐城緑蔭中学校・高等学校で開催されました。

東北3県にあるPITをめぐるライブツアー「【BEAT 4】~Promise~ 東北PITツアー with Team Smile」も同時に開催されており、前日にはいわきPITでライブをしたばかりの布袋さん。チケットは即完売、大盛り上がりだったライブの余韻を残したまま、専用バスで市内の視察へ出かけました。

まずは四倉へ移動し、レストラン「森のキッチン」(ワンダーファーム内)で、地元の食材をふんだんに使ったランチ。店長やシェフからは、未だに残る風評被害の現状が語られました。

その後、「チャイルドハウスふくまる」へ。「ふくまる」は、震災による津波被害や原発事故によって、子供たちが受けた心の傷をケアし、穏やかな成長を見守る拠点として、2014年4月に「道の駅よつくら港」の隣地にオープンしました。震災孤児・遺児の方々や、日頃屋外で思いっきり遊べない福島の子供たちが集うこの場所は、2011年7月に再結成された布袋寅泰さんと吉川晃司さんのユニットバンド「COMPLEX」による、東京ドームでのチャリティライブの収益金の一部が、寄付として投じられて完成しました。大勢の子供たちに熱烈な歓迎を受けた布袋さんは、
「早くここを見に来たいとずっと思っていた」「子供たちの笑顔はいつ見ても素晴らしい。地域、日本を照らすのは、やっぱり子供たちの笑顔だよね」
と終始嬉しそうに子供たちとふれ合っていました。

子供たちの歓声に見送られながら、後ろ髪引かれる思いで、次の訪問地である久ノ浜「浜風商店街」へ。久ノ浜は名前の通り沿岸部に位置する町で、東日本大震災では津波によって壊滅的な打撃を受け、いわき市内でも最も被害の大きかった場所と言われています。
仮設の商店を一軒一軒回った布袋さんに、八百屋の主人が語りかけます。「あの日は、耳のすぐ後ろに波の音を聞きながら逃げました。」「1秒1秒、あの日のことは全部覚えているのに、あれから今日までの5年間は、とにかく必死で何も覚えていないんです。」黙ってその話しに耳を傾けていた布袋さんは、「こうして日々を重ねていくことが前進ですよね」「立ち止まってはいられない、まだまだ道半ばの過程に過ぎないのですね」と深くうなずいていました。

そしていよいよ、今回の「“わたしの夢”応援プロジェクト」の会場である「私立磐城緑蔭中学校・高等学校」へと向かいます。この頃、会場ではすでにリハーサルが始まっており、一般応募や推薦によって集まった地元出身の学生バンド4組(総勢15名)が、緊張の面持ちで最後の調整をしていました。

市内視察を終えた布袋さんたち一行が会場に到着し、まずはオープニングの挨拶が始まります。 「今日はみんなで楽しみましょう!」と布袋さんからエール。

布袋さんを始め、今回の東北PITツアーのバンドメンバーである、Zachary Alfordさん(Drum)、井上富雄さん(Bass)、河野圭さん(Keyboard)ら、音楽界の第一線で活躍するミュージシャンの皆さんを目の前に、各バンドの演奏が披露されました。

まず一組目は、磐城緑蔭高校軽音楽部から、「北極大陸」(Gt.赤川翔馬さん、Vo.門脇昇輝さん、Ba.鈴木理玖さん、Dr.西彩会さん)。オリジナル曲の「いつかどこかで」を演奏しました。演奏後のQ&Aのコーナーでは、ボーカル・門脇さんから「演奏中にリズムがバラバラになってしまうとき、どうしたらいいか」という質問。布袋さんが「ちょっと貸して」とギターを手にすると、廊下から見ていた父兄の皆さんやスタッフからも、どよめきと喚声が上がります。
「こうやって、ギターがもっとリズムを出すと、ドラムとベースもギターについてくるようになる。ギターがみんなを引っ張っていく気持ちで。ボーカルの門脇君は、とても力強い。バンドのエネルギーを一つにして、そこにボーカルが乗っかっていったら、もっともっとパワフルになる。リズムを強調して歌うこと。」

さらに、ギターの赤川さんからの「ドライブをかけたときの抜けが思う通りにいかない」という悩みに対しては、
「音を出すことも大事だけど、音を切ることも意識したほうがいい。そのためには、カッティングの練習。そうすると歪んだ音も、もっともっと抜けてくる。思い通りの音が出ないことを、楽器やアンプやエフェクターのせいにしないで、アンプに繋げずに練習するくらいの気持ちで、歯切れよいリズムを心がけると楽しくなってくるよ。」
と布袋さんからアドバイス。

二組目は、湯本高校軽音楽部から「奏屋」(Vo.渡邉桃花さん、Gt.加藤昇悟さん、Ba./Gt.八木さくらさん、Dr.熊倉有紀さん、Vo.鈴木茉椰乃さん)。DECO*27の「Ghost Rule」を演奏しました。「まだまだ卵のようなバンドだが、メンバー全員が音楽を愛している。それぞれが最高の音楽を奏でられるように頑張ります。」と話した彼女たちの演奏を聞き、布袋さんは
「楽しさがビシバシ伝わってきた。ボーカルが二人というのが一番の特徴。この、強いキャラクターの二人をどうやって盛り立てていくか、楽しみ。どういう風に成長していくのか、また聞いてみたい。」
と感想を語りました。

三組目は、緑蔭中学校から「Philia」(Gt.須藤えりなさん、Gt./Ba.高野仁さん、Key./Vo.藤井梨紗子さん)。モンゴル800の「小さな恋の歌」を演奏しました。ドラムがいない構成だったため、布袋さんから「ドラムが入ったらどんな感じになるかやってみたら?」と提案があり、急遽Zacharyさんが参加することに。Zacharyさんのドラムに合わせて演奏が始まると、当然ながら初めの演奏とはガラリと変わった印象に。その雰囲気の、生き生きとした変わりように、オーディエンスの大人たちからも感嘆の声が上がります。

最後は、一般応募枠から今回の参加が決まった「HOT LIPS」(Gt./Vo.鈴木優斗さん、Ba./Cho.工藤悠さん、Dr./Cho.斉藤裕伸さん)。オリジナル曲の「BABY」を披露しました。「ロックに対する熱い気持ちは誰にも負けない!」と意気込む彼らの演奏を聴いた布袋さんも、
「ロックンロールに懸けるんだ、という気持ちがちゃんと伝わってきた。」
チームスマイル・矢内代表も、「プロフェッショナルの方たちの前で演奏することは大変緊張したと思うけど、これがいいきっかけになって第二の「BOØWY」になって育っていってくれることを願っています。」とエールを送りました。
この「HOT LIPS」は、今回の出演決定後になんとボーカルが脱退してしまい、急遽ギターの鈴木さんがボーカルも担当することに。そんな鈴木さんからの、「これまでの活動の中で、方向性の違いによる葛藤があったか。」という質問に布袋さんは、
「同じことを目指してやっているんだけど、どこかズレていたりするよね。言ってしまえば、そのズレもハーモニー。あまりにもみんなが一つになりすぎてもダメ。ロックンロールは少し火花が散るくらいのほうが、面白いのかもしれない。男同士なんだから、ぶつかるときはぶつかって、一つになるときは一つになって、気持ち良くやらないと良い音は出来ないよ。」
と。

こうして全ての演奏が終了。最後に、布袋さんは
「今日は、遠い昔の自分自身を見つけた気がした。音楽を通じてエネルギーを人に与えようとしている人達がいるということは、ミュージシャンとしてとても嬉しかった。でも、自分に満足したらそこまで。その先にある新しい自分、違う景色をみんなも追い求めていって欲しい。」
と、この日のプログラムを締めくくりました。

今回も大変充実した、色濃いイベントとなりました。この日の様子は8/28(土)17:00よりテレビユー福島にて、特集番組が放送される予定ですので、福島県内にお住まいの皆様はぜひご覧ください。また、岩手めんこいテレビでも、8/20(土)13:30からの特別番組でこの日の模様が放送されました。

最後に、磐城緑蔭中学校・高等学校の牛来正之先生から頂いたメールをご紹介します。

『8月5日(金)に開催されました布袋氏と高校生のイベントに際しまして、
戸塚様はじめとする関係各位の皆様におかれましてご尽力くださり感謝申し上げます。
中学生、高校生ともに、直にプロの演奏を見て、それぞれがそれぞれの想いで感動したのはもちろんのこと、
イベントを開催するにあたりどのような方々のサポートがあるのかを理解でき貴重な経験を得ることができました。
教育で東北に元気・勇気・希望をこれからも東北の若者たちとともに邁進してまいる所存です。
これからも、人数以上に輝いている若者の多い磐城緑蔭を今後もよろしくお願い致します。
磐城緑蔭中学・高等学校 担当 牛来正之』

撮影:山本倫子