イベントレポート

『THE OPENING MATCH at 豊洲PIT』

『THE OPENING MATCH at 豊洲PIT』と題された18日は3組のアーティストが登場。オールスタンディング形態ではこれが初日ということになる。波の音のSEとともにステージに現れたのは2人組の音楽ユニット、キマグレン。「夏と海を持ってきたよ!」という言葉で始まったのは「海岸中央通り」だった。3100人の手が左右に揺れて、海の波のようだ。情熱的に歌いまくる「ENDLESS SUMER」、柔らかな歌声からいとしさとせつなさがにじむ「DEAR」など。彼らが登場するだけで、豊洲PITが夏のビーチへ変わっていく。

「もう10月で、世間の格好と僕らのカッコウとギャップがだんだん開いてくるんですけど、僕らは1年中夏だ、海だって言ってるんで。会場内の気温も8月くらいになってきたかな」とISEKI。「初日の声を聞かせてくれ~!」という声に応えて、シンガロングとなったのは「LIFE」だった。KUREIの伸びやかな歌声に歓声が起こる。客席でもタオルが回り、潮風のような風が起こっていく。

「震災から3年経って、(被災地の人々のことを)毎日考えられるかと言ったら、考えられていないなあと思って。こういう場所があったり、曲があったりすると、考えるきっかけになると思うし、みんなも少しでも何かを感じてくれたらいいなと思っています」というMCに続いて、気仙沼の子供たちと一緒に作った「笑顔の花」が披露された。“声を乗せて君に届けよう”という歌詞のとおり、彼らの歌が寄り添うように響いてきた。

続いて登場したのは独創的な音楽性で注目を集めている4人組のバンド、ゲスの極み乙女。だった。休日課長(B)とほな・いこか(Dr)の生み出すファンキーかつダンサブルなグルーヴに乗って、川谷絵音(V、G)のラップが繰り出されていく「パラレルスペック」での始まり。切れ味のいいグルーヴに会場内が激しく揺れる。疾走感あふれる演奏で一気に駆け抜けていく「キラーボール」、スリリングな演奏が魅力的な新曲「星降る夜に花束を」、ちゃんMARI(key)のピアノをフィーチャーした「列車クラシックさん」、せつなさがほとばしるダンス・ナンバー「猟奇的なキスを私にして」など、ヒップホップもファンクもダンスミュージックもプログレもクラシックも飲み込んだ自在な音楽を展開していく。「みなさん、ゲスの極みと一緒に遊びませんか?」という言葉に続いては「アソビ」。まさにこれは音楽による遊びを具現化したような楽しい曲だ。客席も一緒に“パラリラパラリラ”と歌っていく。最後の曲は「ユレルカレル」。今の瞬間を完全燃焼していくような演奏に胸を揺すぶられた。

トリを務めるのは桜井和寿とGAKU-MCのユニット、ウカスカジー。桜井のアカペラで始まっていったのは「勝利の笑みを 君と」だった。ひとりだけの歌声と思いきや、会場中がすぐ一緒に歌い出している。そして飛び跳ねている。GAKU-MCが客席をあおって、全員が雄叫びをあげている。「手を出すな!」ではバンドアミーゴのファンキーな演奏に乗って、GAKU-MCがソリッドなラップを繰り出していく。さらに「サンシャインエブリディ」、「春の歌」へ。

「音楽とフットボールは言葉が通じなくても、一瞬で仲間になれるからね」とGAKU-MC。その言葉をそのまま音楽にしたような「「縁 JOY AMIGO」ではみんなでタオルを回しながら。まるでスポーツのような爽快感と肉体性のある世界が楽しい。ピアノで始まった「My Home」での桜井の温かな歌声は深く染みこんできた。桜井もGAKU-MCもアコギを手にしての「昨日のNO、明日のYES」ではメンバー紹介を挟んで、Mr.Childrenの「Tomorrow never knows」が演奏されるサプライズもあった。ここでも観客全員が歌っている。“明日へ”という歌詞からまた「昨日のNO、明日のYES」へ戻る展開。ラストの曲は「mi-chi」。桜井とGAKU-MCとが肩を組んで歌う場面もあった。肩こそ組んでないけれど、ウカスカジーと客席とが一体となって歌っていた。「ウカスカジーのライブの特徴としまして、ともかく一緒に歌うというのがあって」という桜井の言葉どおり、全員がコーラスアミーゴ。これがウカスカジーのライブだ。全員参加型という点ではスポーツに限りなく近い音楽。耳で聴く、目で観るだけでなく、体を使って、喉も使って楽しむスポーティーでなおかつ感動的なステージ。3組それぞれが個性を発揮して、会場を巻き込んで一緒に参加していく夜となった。

終演後、豊洲PITに隣接のMIFA Football Parkフットサルコートでアフターパーティーも行われた。おそらく観客のほとんどの人が参加したのではないだろうか。DJブースでダイノジのDJもあり。球舞のパフォーマンスも展開された。GAKU-MCやキマグレンが顔を出す場面も。ダイノジが「4月6日に三陸鉄道が全線開通しました」と言った後で、「トレイントレイン」をかけて、参加者たちが輪になって踊っていた光景も印象的だった。たくさんの思いがひとつになった時に大きなパワーが生まれていく。“PIT”とはそのパワーを活かしていく場ということだろう。ただし、一過性のものではなくて、継続していくことが大切になってくる。つまり勝負はこれからということだ。

ディスクガレージ ライブレポートより転載

  • TEXT/長谷川 誠
  • 撮影:武 裕康/横井明彦