『“わたしの夢”応援プロジェクト』vol.3 清武弘嗣さん 取材リポート
2016/06/17
『“わたしの夢”応援プロジェクト』第3弾は、第2弾の翌日に開催。6月11日(土)に『清武弘嗣選手とサッカーをやろう』が磐城高校で行われました。
イベント前に、一般社団法人チームスマイルのアンバサダーを務める清武選手はチームスマイル矢内廣代表理事、いわきPIT村岡寛顧問らとともに、日本代表専属シェフ・西芳照さんのお店であるアルパインローズと福島第一原発の対応拠点となっているJヴィレッジへ向かう。
車中で清武選手と矢内代表理事は、チームスマイルのアンバサダーに就任した流れを語り合った。
矢内代表理事が「昨年10月にハノーファーへ行って、試合を見て、食事もご一緒しましたね。清武さんとチームスマイルやPITなど、色んな話をしました。そこで、チームスマイルにぜひ協力してくださいと言ったら、二つ返事でやりますと言ってくださり。清武さんは日本にいる時間は限られているのに、その中で今回いわきに来られたのは大変うれしいですね」と言えば、清武選手も「僕自身ずっと何かしたいと思っていたのですが、何をすればわからない状態で。そんな時に矢内代表のお話を聞いて、こういうことをやりたいと思いました。今回実現して、僕の方こそうれしいです」と応じた。
アルパインローズに到着すると、清武選手と西シェフが旧交を温める。福島牛のハンバーグにめひかりの天ぷら、銀だらの西京焼き、コシヒカリ、サラダなど、福島県産の食材で作られた、味とボリューム満点の松花堂弁当とすいとんに舌鼓を打った。
話は「長友焼き」こと西京焼きの命名秘話に。
西シェフ「これ長友焼きね」
清武選手「あっ、代表の食事はビュッフェで、早い者勝ちでね。西京焼きは選手に人気があるんですけど、いつもないんですよ。それは(長友)佑都くんがひとりで西京焼きを10個くらい取っているから(笑)」
西シェフ「そう、だから長友焼き(笑)」
村岡顧問が風評被害について、「このようにめひかりなど福島の魚介はおいしいし、安全なんですけどね。そもそも魚は回遊していますから、漁場は一緒なのです。水揚げした港によって、○○産となるわけです。魚は同じでも、四倉産は避けられる現実はありますね」と説明すると、清武選手も聞き入っていた。
食後は、西シェフも加わって、一行はJヴィレッジへ。Jヴィレッジでは、東京電力石崎芳行副社長が出迎え、アテンドを買って出てくれた。石崎副社長に震災後の説明を受けながら、センターハウスのテラスから全11面の芝のピッチから駐車場に変わり果てたJビレッジの現実を見た。
「芝を戻してほしいですね・・・・・・」と思わず口にした清武選手に、石崎副社長は「責任を持って必ずお返しします。サッカーの聖地ですから」と力強く約束。さらに清武選手も「駐車場になった姿を見るのは辛いけど、必ず元の姿に戻ってくれると思いますし、そのために僕もできることがあれば協力したい」と申し出た。
ドイツで活躍し、日本代表の攻撃のキーパーソンのひとりでもある清武選手にとっても、「Jヴィレッジは夢の舞台」だったと言う。
「小中学生の時に3・4回九州トレセン(トレーニングセンター)としてJヴィレッジに行きましたが、夢の場所でしたね。サッカーをやっている人間にとって、行きたい場所だし、行くこと自体がすごい。選手としてすごくなったと感じられる場所でした。以前のような姿に戻して、再び子どもたちが目指す場所になれば、サッカー界にとっても発展に繋がるはず」
アルパインローズとJヴィレッジを訪れた後は、『清武弘嗣選手とサッカーをやろう』が開催される磐城高校へ。香川真司選手と専属契約する谷田亮太トレーナーによるストレッチ教室が終わると、清武選手が登場。いわき市内のサッカークラブ5チーム・計72名の小学生たちと5分ハーフの3ゲームにフル出場した。
清武選手は大人気なく(?)ちょっぴり本気のドリブルシュートを決めたり、味方にパスコースの指示を出したり、トラップの際にハンドするマリーシアを垣間見せたりと、谷田トレーナーらとミニゲームを堪能した。ミニゲーム後は「思ったより全然動けずショックだけど、楽しかったです。子どもたちとサッカーをして、また、これからがんばろうという気持ちになりました」と感想を語った。
さらに子どもたちに「サッカー選手になりたいですか」と問いかけ、「目標を持って、夢を持ってがんばってください。僕は小学生からプロになりたいと思いました。(小学生の時は)純粋にサッカーを楽しんでもらえれば。(上達法は)深く考えずにサッカーを楽しむ、それが一番です」とメッセージを送った。そして「こういう活動を継続していきたいし、継続すべきだと思います。みんなでサッカーをして、笑顔になれれば」と『“わたしの夢”応援プロジェクト』への継続参戦を誓った。
子どもたちからパワーをもらった清武選手は束の間のオフの後の来季も見据えた。実はこの前日に、スペインの強豪・セビージャへの移籍が合意に達したと報道されたばかり。清武選手は「(リーガは)2年後のワールドカップを意識したら最高の舞台。(移籍の決め手は)チャンピオンズリーグに出られることです。(香川)真司くん、オカちゃん(岡崎慎司選手)とチャンピオンリーグを盛り上げていきたい」と抱負を語った。さらに「空いているなら10番をつけたい。背番号は自分を象徴するもの。(目指す数字は)10・10(10ゴール10アシスト)。Jリーグでもドイツでもスペインでも、プロになってから目指す数字は変わらない」と勝負師の顔を覗かせた。
母校でのイベントを見守った矢内廣代表理事は「清武さんとサッカーを一緒にやれるなんて、子どもたちにとって最高の財産ですね。清武さんにはぜひ、続編をやってほしいし、2018年に再オープンされるJヴィレッジで子どもたちとサッカーイベントができれば最高ですね」と次なる企画の青写真を描いた。
そして『“わたしの夢”応援プロジェクト』第3弾に参加した子どもたちは「日本代表選手はうまいと思った」「うちのコーチとは全然違う」「すごい迫力だった」「清武選手とひとつになってサッカーをやれてうれしかった」と興奮気味に感想を口々に語った。子どもたちは清武選手から飛び切りの笑顔をもらったのだった。
● 取材/文:碧山緒里摩