4/23(日)“わたしの夢”応援プロジェクト vol.10「熊本マリのピアノ・クリニック」釜石市内視察の様子&イベントレポートをアップしました。

2017/04/27

一般社団法人チームスマイルによる、被災地の子供たちを元気づけ、その夢の後押しをするための「“わたしの夢”応援プロジェクト」。前回(3/26)のいわき開催に続き、今回もピアニスト・熊本マリさんを迎え、『チームスマイルpresents“わたしの夢”応援プロジェクトvol.10 熊本マリの@ピアノ・クリニック』と題したイベントが、「釜石PIT」で開催されました。

熊本さんは今回が初めての釜石訪問。震災から6年が過ぎた釜石市内を視察するため、イベント前日に釜石入りした熊本さん。まずは釜石市立釜石中学校の吹奏楽部を訪問しました。

生徒から贈られた歓迎の花束を嬉しそうに抱える熊本さん

生徒から贈られた歓迎の花束を嬉しそうに抱える熊本さん

生徒から贈られた歓迎の花束を嬉しそうに抱える熊本さん

生徒から贈られた歓迎の花束を嬉しそうに抱える熊本さん

熊本さんが教室へ入ると、生徒たちが熊本さんへの歓迎の気持ちを込めて「アンダー・ザ・シー(リトルマーメイドより)」「ルパン三世のテーマ」「虹(合唱曲)」の3曲を披露してくれました。

合唱曲「虹」では顧問の新井先生の伴奏で

合唱曲「虹」では顧問の新井先生の伴奏で

合唱曲「虹」では顧問の新井先生の伴奏で

合唱曲「虹」では顧問の新井先生の伴奏で

聴き終えた熊本さんは「本当にありがとうございます。とても素敵でした。アップテンポの曲がよく合うわね」と絶賛。さらに、音楽室に飾ってある歴史上の音楽家たちの写真を見て、「こうやって音楽室に写真を飾るのは、世界でも日本だけ。神々しく崇められているような感じがするけれど、みんなちょっと変わっているだけの普通のおじさん。そういうエピソードを知ってもらって、クラシック音楽をもっと身近に感じて欲しい」と笑いを誘います。

そして熊本さんからは、日本にはあまり馴染みのない、エルネスト・レクオーナというキューバ人作曲家の「マラゲーニャ」という曲が生徒たちにプレゼントされました。「プロのピアニストの演奏を聴くのは初めて」と生徒たちも大喜び。

最後のQ&Aのコーナーでは、「ピアノの活動を通して一番心に残ったことは?」という生徒たちからの質問に、熊本さんは「色々あるが、記憶喪失の方が私のコンサートにいらっしゃって、『演奏を聴いて少し記憶が戻った』とおっしゃってくださったことが、とても嬉しくて心に残っています」と感慨深く答えていました。

最後はみんなで「釜石―っ!よいさーっ!」

最後はみんなで「釜石―っ!よいさーっ!」

最後はみんなで「釜石―っ!よいさーっ!」

最後はみんなで「釜石―っ!よいさーっ!」

生徒たちに見送られ、後ろ髪を引かれる思いで一行は学校を後にし、続けて地元の海産物を加工する「ヤマキイチ商店」にお邪魔しました。このヤマキイチ商店のある釜石湾のあたりは、震災時8mほどの大きな津波に襲われたそうです。

屋根には、よく目立つ「泳ぐホタテ」の文字が。左側には今もまだ津波の爪あとが残っており、どのくらいまで波がきたかがよくわかります

屋根には、よく目立つ「泳ぐホタテ」の文字が。左側には今もまだ津波の爪あとが残っており、どのくらいまで波がきたかがよくわかります

ヤマキイチ商店の前から見た景色。すぐそばには入り組んだ釜石湾が広がります

ヤマキイチ商店の前から見た景色。すぐそばには入り組んだ釜石湾が広がります

屋根には、よく目立つ「泳ぐホタテ」の文字が。左側には今もまだ津波の爪あとが残っており、どのくらいまで波がきたかがよくわかります

屋根には、よく目立つ「泳ぐホタテ」の文字が。左側には今もまだ津波の爪あとが残っており、どのくらいまで波がきたかがよくわかります

ヤマキイチ商店の前から見た景色。すぐそばには入り組んだ釜石湾が広がります

ヤマキイチ商店の前から見た景色。すぐそばには入り組んだ釜石湾が広がります

こちらでは、活きたままの泳ぐホタテ をはじめ、わかめ、うに、いくらやあわびなど、鮮度抜群の海の幸を全国へ届けてくれます。岩手県産のホタテは、その質の良さから浜値が日本一なのだそうです。

地元の漁師さんから買い付けた良質なホタテを、この水槽で泳がせています

地元の漁師さんから買い付けた良質なホタテを、この水槽で泳がせています

地元の漁師さんから買い付けた良質なホタテを、この水槽で泳がせています

地元の漁師さんから買い付けた良質なホタテを、この水槽で泳がせています

店主の君ヶ洞(きみがほら)さんから震災当時のことを聞きながら、実際にさばきたての活きたホタテを頂きました。「こちらは海に近いところにあるけれど、3.11の当日は大丈夫だったのですか?」と矢内代表からの問いかけに、「毎日海を見ているので、いつもと違うことにすぐに気がついた。これは大きな津波がくるぞ、と思って顧客リストだけ持ち、急いで避難したので、家族はみんな大丈夫でした」と語る君ヶ洞さん。津波で会社もすっかり流されてしまい、以前の半分の大きさで再建された建物で、ようやく営業再開ができたのが一年後の2012年夏。震災以降、君ヶ洞さんは会社の再建だけでなく、「釜石はしのうえ朝市」を主催するなど、街づくりにも奔走されたそうです。

ホタテ専用のヘラを使って。貝柱は甘く、ひもも味が濃くて絶品

ホタテ専用のヘラを使って。貝柱は甘く、ひもも味が濃くて絶品

熊本さんも矢内代表も「美味しい!東京に帰ったら絶対に注文しよう!」と大喜び

熊本さんも矢内代表も「美味しい!東京に帰ったら絶対に注文しよう!」と大喜び

ホタテ専用のヘラを使って。貝柱は甘く、ひもも味が濃くて絶品

ホタテ専用のヘラを使って。貝柱は甘く、ひもも味が濃くて絶品

熊本さんも矢内代表も「美味しい!東京に帰ったら絶対に注文しよう!」と大喜び

熊本さんも矢内代表も「美味しい!東京に帰ったら絶対に注文しよう!」と大喜び

三陸産のとびきり新鮮なホタテを楽しんだ一行は、確かな復興への足取りを感じながら、一日を終えました。

バスへ戻る一行。少しずつ港の整備も進んでいます

バスへ戻る一行。少しずつ港の整備も進んでいます

バスへ戻る一行。少しずつ港の整備も進んでいます

バスへ戻る一行。少しずつ港の整備も進んでいます

そして、イベント当日。前日の移動中に、車の中から大きな釜石大観音を見た熊本さんから、「ぜひ行ってみたい!」とリクエストが。釜石PITホールマネジャー 井筒さんの案内のもと、チームスマイルスタッフも一緒に、リハーサルの合間をぬって本番前に拝観してきました。

観音堂へ続く階段を上る熊本マリさんと、釜石PIT ホールマネジャーの井筒さん

観音堂へ続く階段を上る熊本マリさんと、釜石PIT ホールマネジャーの井筒さん

観音堂へ続く階段を上る熊本マリさんと、釜石PIT ホールマネジャーの井筒さん

観音堂へ続く階段を上る熊本マリさんと、釜石PIT ホールマネジャーの井筒さん

境内に入ると、48.5mの大きな観音様が太平洋を見下ろす高台に立っており、腕には大きな魚が抱えられています。

野田市長いわく、腕に抱えられた魚は鰤とのこと

野田市長いわく、腕に抱えられた魚は鰤とのこと

野田市長いわく、腕に抱えられた魚は鰤とのこと

野田市長いわく、腕に抱えられた魚は鰤とのこと

昭和45年に建立されたという釜石大観音の内部は、13階に分かれていて、展望台まで上ると海抜120mからの素晴らしい眺めを見ることができます。震災時、この高台に逃げた人達は津波から逃れられたそうです。目の前いっぱいに広がった太平洋を眺め「釜石にはこんなに素敵なところがあるのね。もっと注目されるべきだわ」と熊本さん。素晴らしい景色に癒されて、いよいよ釜石PITへ向かいます。

動物好きな熊本さん、参道で猫を見つけました

動物好きな熊本さん、参道で猫を見つけました

動物好きな熊本さん、参道で猫を見つけました

動物好きな熊本さん、参道で猫を見つけました

イベントがスタートすると、まずは釜石市 山崎副市長から「震災から6年目を迎えたが、これからが正念場。これからも一生懸命頑張っていきたい」とのご挨拶を頂き、続いて熊本さんが登場。まずはトークショウが始まります。

山崎副市長もイベント会場まで駆けつけて下さいました

山崎副市長もイベント会場まで駆けつけて下さいました

「私はピアニストにしてはとても手が小さいの。小さいからといって諦めるのではなくて、その人の身体にあった工夫をすることが大切。決して諦めないで欲しい」と語る熊本さん

「私はピアニストにしてはとても手が小さいの。小さいからといって諦めるのではなくて、その人の身体にあった工夫をすることが大切。決して諦めないで欲しい」と語る熊本さん

山崎副市長もイベント会場まで駆けつけて下さいました

山崎副市長もイベント会場まで駆けつけて下さいました

「私はピアニストにしてはとても手が小さいの。小さいからといって諦めるのではなくて、その人の身体にあった工夫をすることが大切。決して諦めないで欲しい」と語る熊本さん

「私はピアニストにしてはとても手が小さいの。小さいからといって諦めるのではなくて、その人の身体にあった工夫をすることが大切。決して諦めないで欲しい」と語る熊本さん

5歳からピアノを習い始めたものの、「練習が大嫌いで30分もピアノの前に座っていられなかった」という熊本さん。10歳でスペインへ移住してから、コンサートやオーケストラに触れるようになり、「音楽でこんなに人を感動させることができるんだ、と思った」とあらためて音楽の力を実感したそうです。ちなみにスペインでは、一流の楽団の演奏でも安い席だと100円くらいで観られるのだそうです。

プロのピアニストになろうと決意したのは、中学2年生のとき。現地の音楽学校に通って、妹さんとピアノを取り合いながら一生懸命練習を重ねたそうです。そんな中、ある先生に「あなたは手が小さ過ぎるからピアニストにはなれない、諦めなさい」と言われ、熊本さんはとても落ち込みます。

「生徒にとって先生とは、絶対的な存在で、その人の言葉によって一生を左右される。でも、ピアノの先生とは、そういう存在ではなくて、“医者”のような存在であるべき」と熊本さん。「どうすれば今悩んでいる問題が解決するか、今日は応急処置として、皆さんのお手伝いをしたい。ちょっとしたことで音はすぐに変わる。今日はそれを皆さんにも見て欲しい」と、この日の目玉であるピアノ・クリニックが始まりました。

今回の生徒は、3名。集まった約80名のお客様を前に、それぞれ一生懸命演奏して下さいました。

演奏を見て熊本さんは、「なるほどね」といった感じで頷くやいなや、すぐに良いところと直すべきところを指摘します。椅子の高さから、強弱のつけ方、曲のイメージ、姿勢、手の置き方、様々な視点から、優しく的確なアドバイスをしていく熊本さん。熊本さんからの指導を受けると、みるみるうちに音が変わっていくのがわかります。

長内沙羅ちゃん(小2) 演奏曲:ネッフェ「カンツォネッタ」 「この部分はママの声、ここの部分はパパの声を想像して弾いてみて」と熊本さんがアドバイスすると、強弱がついてどんどん表情豊かな演奏になっていきます

長内沙羅ちゃん(小2) 演奏曲:ネッフェ「カンツォネッタ」
「この部分はママの声、ここの部分はパパの声を想像して弾いてみて」と熊本さんがアドバイスすると、強弱がついてどんどん表情豊かな演奏になっていきます

長内沙羅ちゃん(小2) 演奏曲:ネッフェ「カンツォネッタ」 「この部分はママの声、ここの部分はパパの声を想像して弾いてみて」と熊本さんがアドバイスすると、強弱がついてどんどん表情豊かな演奏になっていきます

長内沙羅ちゃん(小2) 演奏曲:ネッフェ「カンツォネッタ」
「この部分はママの声、ここの部分はパパの声を想像して弾いてみて」と熊本さんがアドバイスすると、強弱がついてどんどん表情豊かな演奏になっていきます

熊谷健人くん(小6) 演奏曲:ギロック「海の風景」「人魚」(叙情小曲集より) 「小指側の力が弱い。これだと、まるで不安定なテーブルみたいでガタガタしてしまう」とアドバイスする熊本さん。「私の手を見てみて。小指側の筋肉がすごいでしょう?」と熊本さんの手を見て、思わず「スゴイ!」と驚く健人くん

熊谷健人くん(小6) 演奏曲:ギロック「海の風景」「人魚」(叙情小曲集より)
「小指側の力が弱い。これだと、まるで不安定なテーブルみたいでガタガタしてしまう」とアドバイスする熊本さん。「私の手を見てみて。小指側の筋肉がすごいでしょう?」と熊本さんの手を見て、思わず「スゴイ!」と驚く健人くん

熊谷健人くん(小6) 演奏曲:ギロック「海の風景」「人魚」(叙情小曲集より) 「小指側の力が弱い。これだと、まるで不安定なテーブルみたいでガタガタしてしまう」とアドバイスする熊本さん。「私の手を見てみて。小指側の筋肉がすごいでしょう?」と熊本さんの手を見て、思わず「スゴイ!」と驚く健人くん

熊谷健人くん(小6) 演奏曲:ギロック「海の風景」「人魚」(叙情小曲集より)
「小指側の力が弱い。これだと、まるで不安定なテーブルみたいでガタガタしてしまう」とアドバイスする熊本さん。「私の手を見てみて。小指側の筋肉がすごいでしょう?」と熊本さんの手を見て、思わず「スゴイ!」と驚く健人くん

高田亨さん(54歳) 演奏曲:ベートーヴェン「ソナタ月光 第一楽章」 演奏を聴いた熊本さんから「弾き始めると、肩や手首が上がってしまうので、もう少し落とす感じで」と言われた高田さん。意識をしてもう一度弾くと、ガラリと音色が変わります。「この音色を覚えて」と、熊本さん

高田亨さん(54歳) 演奏曲:ベートーヴェン「ソナタ月光 第一楽章」
演奏を聴いた熊本さんから「弾き始めると、肩や手首が上がってしまうので、もう少し落とす感じで」と言われた高田さん。意識をしてもう一度弾くと、ガラリと音色が変わります。「この音色を覚えて」と、熊本さん

高田亨さん(54歳) 演奏曲:ベートーヴェン「ソナタ月光 第一楽章」 演奏を聴いた熊本さんから「弾き始めると、肩や手首が上がってしまうので、もう少し落とす感じで」と言われた高田さん。意識をしてもう一度弾くと、ガラリと音色が変わります。「この音色を覚えて」と、熊本さん

高田亨さん(54歳) 演奏曲:ベートーヴェン「ソナタ月光 第一楽章」
演奏を聴いた熊本さんから「弾き始めると、肩や手首が上がってしまうので、もう少し落とす感じで」と言われた高田さん。意識をしてもう一度弾くと、ガラリと音色が変わります。「この音色を覚えて」と、熊本さん

最後は、熊本マリさんによるミニ・コンサートです。ショパン「ノクターン」や、リスト「愛の夢」など、渾身の演奏を披露して下さいました。中でも、奥村一(はじめ)さんという日本の作曲家について、熊本さんは「外国の方から言われて、こんなに素敵な作曲家がいたんだと、そのとき初めて知った。私は、日本人として恥ずかしかった」と話し、「(有名な曲でもそうでなくても)自分が良いと思ったものは、みんなに広めたい」と、日本らしいメロディーを軽やかに奏でました。

まるで生き物のようにピアノを操る熊本さんの演奏は圧巻

まるで生き物のようにピアノを操る熊本さんの演奏は圧巻

まるで生き物のようにピアノを操る熊本さんの演奏は圧巻

まるで生き物のようにピアノを操る熊本さんの演奏は圧巻

拍手喝采の中、この日のイベントは幕を閉じました。閉演後、お客様から「大好きな曲が聴けて、思わず一緒に来た人とハイタッチしてしまいました!」と大喜びする声を聞き、スタッフ一同にも笑みが広がります。矢内代表は「皆さんに喜んでもらえて良かった。子供たちには、どんどん本物の芸術に触れて欲しい」と語りました。

イベントを終えた熊本さんは、「釜石は想像以上に明るい街だった。海の近くにあるという気候や、明るく社交的なみなさんのお人柄に、ヨーロッパ的な要素を感じた。本当に楽しくてあっという間だった!」と目をキラキラさせて、一行とともに東京への帰路につきました。

この日の曲目です

この日の曲目です

この日の曲目です

この日の曲目です

(撮影:Yoshiyasu Saijo)