通期決算にあたり、社長からのごあいさつ

2021年05月13日

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皆様には平素よりご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。中期経営計画の最終年度にあたる2020年度は、コト消費市場の好況を追い風に順調なスタートを切る予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、当社も深刻な影響を受けることとなりました。

昨年2月下旬、政府から名指しで自粛要請を受けたライブ・エンタテインメント業界では、国民の皆様の健康と公共性を最優先し、長期にわたって準備を重ねてきた興行やイベントを自ら中止するという、まさに苦渋の決断を続けてきました。緊急事態宣言は3回に及び、その度に政府によるイベントの開催制限が強化され、人の密集や移動、感染の拡大を止めることに協力してきましたが、その結果、前年実績に比して、実に約8割にも相当する市場が消失することとなりました。これは、どの産業よりも遥かに深刻なダメージです。小規模事業者や個人に支えられているこの業界では、コロナ禍が収束しても、再び立ち上がることが困難になりかねない危機的な状況にありますが、残念ながらその完全な回復までは、未だに険しい道のりが続いている状況です。

緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が発令されていない期間や地域でも、厳しい開催制限を受け容れ、お客様の協力のもと、徹底した感染拡大防止策を講じた上でイベントを開催し、集団感染やクラスターの発生を未然に防いできました。観客を増やした実証実験も含め、少なくともこれまで会場やスタジアム内で集団感染等が発生した事実がないにもかかわらず、明確な根拠が何も示されぬまま、「客席の50%以下」「収容5,000人以下」「午後9時までに終演」といった開催制限が延々と続けられているのが実情です。しかしその間、中止や延期に伴う損失、逸失利益への補償・補填はもちろん、飲食店のような給付金や協力金の支給もないまま1年以上が経過しました。ともすれば、政府による感染防止対策のスケープゴートにされていると言っても過言ではないとさえ感じています。

特に、3度目の緊急事態宣言では、原則として「無観客」での開催を要請されましたが、ほとんどのイベントは無観客では多額の損失を被るため、結果的に「中止」を余儀なくされました。ライブ・エンタメイベントは、あくまでも観客あってのものであり、開催できればよいということではなく、お客様に感動や喜び、元気や勇気を与えるために開催されているものです。まさに、演じる側(パフォーマー)と観る側(オーディエンス)の双方が一体となって創り上げているものなのです。また、「社会生活の維持に必要でないもの」との線引きには、大きな疑問と違和感を抱かざるを得ませんでした。文化芸術、エンタテインメントやスポーツは、何世紀にもわたって、人々に感動や喜び、勇気や活力、笑顔や刺激を与え続けてきました。同時にそれが、多様性を受容する日本の温かい価値観を育んできたのです。私たちは、文化芸術、エンタテインメントやスポーツには、コロナ禍で疲弊してしまった人々の心を癒し、前向きな気持ちにする底力があると信じています。決して不要不急なものではなく、水や酸素のように、人々にとってなくてはならないものであると思っています。

当社に限らず、生き生きとした豊かな社会生活を維持し、日本の文化芸術、エンタテインメントやスポーツの大切な未来が失われぬよう、広くこの産業に従事する人々の雇用を守る必要があります。そのためにも、政府には、これまでの逸失利益や事業継続への助成、宣言解除後の回復支援、開催制限の早急な緩和等を強く求めていきたいと思っています。

一方、当社でも、従業員の健康と安全を守るため、在宅型勤務の導入に舵を切り、かねてより着手してきた「働き方改革プロジェクト」の推進を加速させました。雇用を死守し、経営基盤をさらに強化するべく、資本の拡充やRS(譲渡制限付き株式)の付与も行いました。この難局を一丸となって乗り切ることで、これまで以上に「一体感」や「働きがい」を高めていきたいと思っています。同時に、このコロナ禍を「変身」のフックにするべく、バリューチェーンの強化や新規事業の開発、異業種とのアライアンスなどを積極的に進めてきました。

ライブ・エンタテインメント業界に身を置く当社にとって、厳しい試練の日々が続いていますが、全役員・社員が知恵と工夫をもって困難に立ち向かい、これを「チャンス」に変え、来る2022年の創業50周年を笑顔で迎えられるよう努めてまいる所存です。どうか引き続き、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

ぴあ株式会社 代表取締役社長
矢内 廣