社長からのごあいさつ

ぴあは「感動のライフライン」の実現をめざします ぴあ株式会社代表取締役社長 矢内 廣(Hiroshi Yanai)

ぴあは’72年、月刊「ぴあ」を創刊することでスタートを切りました。当時大学4年生だった私はアルバイトで知り合った仲間と共に「このまま就職してしまうのではなく、冗談の通じあう仲間同士で共通の経済基盤をつくれないものか」と日々議論を重ねていました。そこで浮かび上がったのがエンタテインメント情報だけをひとまとめにした雑誌のアイデアです。さっそくサンプルを作り、友人達に見せたところ、「こんな雑誌があれば買いたい」との感想。自分にとって便利なものは他の多くの人々にとっても便利なものであり、それは必ず受け入れられるはずだ。そう確信したのはこの時です。

スタートしてしばらくはぴあは出版社でした。ところが’70年代の後半、ビデオテックスをはじめとするニューメディアが時代の寵児としてマスコミに登場してきました。正直申しまして私は非常に大きな危機感を抱きました。雑誌というプリント媒体は新しいメディアに駆逐されてしまうのではないかという危機感です。当時実験を開始した日本版のビデオテックス「CAPTAIN」に参加しながら検証した結果、プリント媒体はプリント媒体なりの存在理由があることを再確認したわけですが、その時、ぴあという会社の自己規定を考え直す必要も感じました。私たちは集めてきた情報をたまたま紙に印刷し、雑誌という形体で人々に伝達しているにすぎない。言うなればぴあは出版業ではなく、情報伝達を生業としている会社であり、情報はその時代、その内容に最も適した形体・方法で伝達されるべきだ、と考えたわけです。以降、ぴあはデータベースの整備など、情報センタ-としての機能を強化してまいりました。

情報伝達業としてぴあが社会的に認知された大きなきっかけは、’84年の「チケットぴあ」のスタートでした。NTT(当時電電公社)との共同開発による日本初のエンタテインメント・チケットのコンピュータ・オンライン・サービス事業ですが、社内的には非常に素直に発想した新規事業でした。情報誌「ぴあ」で興行情報を探していただき、「チケットぴあ」で前売りチケットをお買い上げいただく。ユーザーの方々にお伝えする情報が、たまたまチケットという顔をしているだけだという考え方でした。

「チケットぴあ」と同時に会員事業「ぴあカード」もスタートさせました。この事業は「チケットぴあ」や街のアミューズメント施設を、より有効に使いこなしていただくためのもので、ぴあが提供するさまざまな「情報」の具体的な行動面でのサポートを目的としています。

またぴあは、文化環境そのものももっと面白くしたいと考え、’77年より「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」を毎年開催しています。才能あふれる映像作家たちに発表の場を、そして映画ファンには出会いの場をとの考え方でスタートし、現在も継続して開催しています。新しい才能を発掘、育成し、次の時代を担う表現者を輩出していく。これからもそのための機会を提供していきたいと思っています。

ぴあは創業以来一貫して、業界の皆様とユーザーの皆様の間をつなぎ、レジャー・エンタテインメントを楽しむための「情報」「サービス」を様々な形で提供することで、ひとりひとりの生き生きとした生活をサポートしたいと考えてまいりました。毎日の生活を豊かなものにしたいと願うユーザーの価値観を尊重した商品・サービスの開発を行うと同時に、レジャー・エンタテインメント業界を活性化するため、業界の方々のご協力を得て、様々な仕組みやシステムを構築してきました。

そして、このデジタルネットワークの時代に、さらに大きくぴあは変わろうとしています。ぴあが持っているコンテンツは、時々刻々と変わるレジャー・エンタテインメント情報のデータベースです。それらはアナログ時代には、雑誌やチケットという紙媒体にアウトプットすることしかできませんでした。しかし、いまやITによって、ぴあの持つ膨大な量の情報はリアルタイムに様々なデバイスに配信されています。同時に、ユーザーもいつでもどこからでも様々なデバイスから情報を入手できます。ITというデジタル技術があってはじめてその真価を発揮するコンテンツによって、ぴあの事業はさらに大きく広がっていきます。

20世紀の”物”の時代に対して、21世紀は”心”の時代と言われています。今や世の中は合理化・効率化に傾き、ともすれば生身の人間には息苦しいことさえあります。しかし、振り子は振れた分だけ反対に振れるように、人々は反動で、非合理的なもの、非効率的なものを求め、バランスをとるようになるでしょう。私たちは、それこそが「遊び」であり、レジャー・エンタテインメントの世界だと考えます。

20世紀の”物”の時代のライフラインは、電気・ガス・水道といった生命維持のためのものでした。21世紀の”心”の時代に用意されるべきライフラインは、毎日の暮らしを生き生きと感動的なものにする、心の豊かさをサポートするインフラでなければなりません。私たちはそれを「感動のライフライン」と名付けました。私たちぴあは、ITを最大限に活用し、レジャー・エンタテインメント領域を楽しむために必要な情報やサービスを届ける「感動のライフライン」を構築することで、21世紀のひとりひとりの生き生きとした生活を支えていきたい、それがぴあの夢であり、使命であると考えています。ひとりひとりが心の豊かさを享受できるよう、新しい提案をしつづけていきます。そして、同時にぴあで働く私たち自身も、感動と誇りを持てる企業になれるよう、努力していきます。21世紀を面白くしていくという果てしないテーマに立ち向かう私たちに、変わらぬご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。