9月9日(土)より開催!「第45回ぴあフィルムフェスティバル2023」のラインナップを紹介

CSR活動

2023年08月28日

第1回から続く、自主映画を対象とした日本初の本格的なコンペティション「PFFアワード」をメインプログラムとし、招待作品部門ではこの映画祭でしか観ることのできない特集上映企画を実現する「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」は、今年で45回目を数えます。

2023年9月9日(土)から 23日(土)まで、国立映画アーカイブにて開催する当映画祭に先立ち、8月9日に同会場でラインナップ発表会が行われました。この日は、招待作品部門のメイン特集となる「イカすぜ!70~80年代」より「大森一樹再発見」の大森監督の長女・大森美季氏、「山中瑶子『あみこ』への道」の山中瑶子監督、第29回PFFスカラシップ作品『恋脳Experiment』の岡田詩歌監督、荒木啓子PFFディレクターが登壇しました。その模様と共に、今年の「ぴあフィルムフェスティバル」のラインナップをご紹介します。

<ラインナップ発表会 会見レポート>

■PFFアワード2023

今年のPFFアワード2023は、557本の応募作品の中から入選した22作品をスクリーンで上映します。上映後は監督を迎えてのトークを行い、「DOKUSO映画館」「U-NEXT」ではオンライン配信も実施します。
今年の傾向について、荒木ディレクターは「今、映画を作るということが非常にカジュアルになってきました。つい最近まで地方に住んでいた人が東京にやってきて、周りに誰も知り合いがいないなかで、ネットを通じて映画の仲間を募って、俳優をオーディションして、映画を作ったという方が3名ほどいて、すごい時代になったなと思いました。映画制作を始めるにあたってのスタートラインが広がっている、開かれていることを感じています。」と今の時代の映画制作環境に対する新鮮な驚きを語りました。
また、会場からの質問で、入選した22作品の特色と、コロナ禍を受けての影響を問われると「コロナをテーマに映画を創作することは、まだ本格的には始まっていない気がしました。もう少し時間が必要だろうと思います。また、ネットで人を募って作品を作った後に、さらに映画制作への欲求が募って専門学校に行く人たちが出てきている。そういう専門学校の活用方法が変わってきたのを感じています」と自主映画制作が新たなフェーズに入っていることを明かしました。

■招待作品部門「イカすぜ!70〜80年代」

今年で第45回を迎えるPFFは、 2028年の第50回に向けて新企画をスタートすることも発表。荒木ディレクターは、「50回を見据えたこの時期に、PFFの始まりからの歴史を整理し、時代を見つめてみたいと考えました。毎年10年区切りでPFFの自主映画のみならず国内外の当時の傑作の数々を紹介し、自主映画ありきの映画史を振り返る特集を計画しています。すでに来年からの企画にも着手していますが、今年はまず70~80年代。くしくもPFFの初期を彩ってくださった方々がお亡くなりになりました。大森一樹監督、斎藤久志監督、日比野幸子プロデューサーという、非常に重要な方々の特集を含めた大きな企画となりました」と、今年の招待作品部門「イカすぜ!70~80年代」について解説しました。

「大森一樹再発見」については、「大森監督はPFF初期に彗星の如く現れた、とにかく映画が好きで自主映画を作った、その名の通り大きな樹木のような人でした」と語り、特集では、自主映画時代の8ミリ作品や16ミリ作品、そして斉藤由貴主演映画『女優時代』などの35ミリ作品を上映する全3プログラムを企画したと明かしました。
ゲストとして大森監督の長女、大森美季氏が登場し、「私は父が『ヒポクラテスたち』を撮った1980年に生まれました。今回デジタル化されるにあたり初めて見たのですが、映画が好きな人たちが集まってワイワイ映画を作り面白くてたまらない、という作品で微笑ましく感じました」と語り、さらに、「家ではあまり映画の話をしませんでしたが、小さい頃に毎年恒例のお花見があり、そのメンバーのあのおじさんが、父の映画に出ていた人だ・・・と(笑)。今になって思えば、父が高校、大学時代の映画作りの仲間たちをずっと大事にしていたんだなと、後になって分かりました」。「父とは小さい時に一緒に映画見に行ったことはよく覚えています。小学生の頃には海外旅行に行った際にも映画を見に行って、まだ当時は日本ではなかったポップコーンを食べながら映画を見る、という一つのエンタメを経験したような、映画にまつわる家族との楽しい思い出はよく覚えています」と、父であり映画監督である大森一樹監督とのエピソードを披露しました。各プログラムでは大森監督の助監督を務め縁の深い緒方明監督がアフタートークに登場し、多くの人に愛された大森監督について語る予定です。

「斎藤久志再発見」について、荒木ディレクターは、「若くして亡くなられて本当に残念なのですが、斎藤久志監督の、なかなか見ることできない作品を上映します。塚本晋也監督が斎藤監督の才能に惚れ込んでプロデュースした『サンデイドライブ』の16ミリフィルム上映や、斎藤監督の現場で出会った鈴木卓爾監督、矢口史靖監督、俳優の田中要次さんの3人が語り、秘蔵映画を見せるプログラムを企画しています」と解説。

また、「山中瑶子『あみこ』への道」と題して自身もトークゲストとして登場する山中瑶子監督は、自身が影響を受けた70~80年代の作品として、アレハンドロ・ホドロフスキー監督『ホーリー・マウンテン』とアンジェイ・ズラウスキー監督『ポゼッション』の2本をセレクト。「『ホーリー・マウンテン』は映画監督になりたいと志した高校2年生のとき、美術の先生に勧められて出会った作品。"映画監督とは作家なのだ"ということを突き付けられた一本でした。『ポゼッション』からは、映画監督は観客に内容を理解させるよう、理路整然と撮るのが当たり前と思っていたが、そうではないことを教わった。映画を撮る人間そのものの感覚が活きている、その時にしか撮れないものを撮った映画があることに衝撃を受けました」と語った。

そのほかに、PFFの礎を築いたパイオニアの1人である日比野幸子プロデューサーが関わった作品上映や、デプレシャン監督特集の特別プログラムとして、偏愛する日本映画『女囚701号 さそり』を語り尽くす企画などを発表しました。

■第29回PFFスカラシップ作品

岡田詩歌監督の劇場デビュー作となる、第29回PFFスカラシップ作品『恋脳Experiment』についても紹介。PFFが企画、製作、公開までトータルに映画をプロデュースする「PFFスカラシップ」。今年は、『Journey to the 母性の目覚め』でPFFアワード2021審査員特別賞を受賞した岡田詩歌監督の新作のお披露目で、世界初上映となります。自身初となる実写映画について、岡田監督は「アニメーション作品は一人で作っていたので、人と一緒に映画をつくることで、自分では想像もしていなかったモノがうまれるワクワク感がありました」と実写映画づくりで得た気付きを語りました。主演には第4回大島渚賞を受賞した映画『やまぶき』のヒロインが記憶に新しい、祷キララ。恋愛に囚われ過ぎてしまった女の子を描いた本作について岡田監督は「もともと大学の卒業制作のためにつくったアニメーション『卒制彼氏』がベースとなっていて、そこにフィクションを重ねました」とコメント。映画祭では、9月15日(金)に上映が行われ、岡田監督のほか、出演者の祷キララ、平井亜門、中島歩とともに舞台挨拶を行います。

そのほか、日本で初紹介となった92年、そして96年に続き、今回が3度目 のPFF来場となる「アルノー・デプレシャン監督特集」や、毎年恒例となったピーター・バラカン氏による音楽映画シリーズ「ブラック&ブラック」。また、特別企画として、「生誕120年・小津安二郎が愛したふたり」では清水宏と山中貞雄作品を上映し、「20代監督の衝撃作」では『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(監督:シャンタル・アケルマン)、『わたしはロランス』(監督:グザヴィエ・ドラン)を上映します。

◆映画祭ラインナップの詳細はこちら



「第45回ぴあフィルムフェスティバル2023」 開催概要

【東京】9月9日(土)~23日(土) 会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館
【京都】10月14日(土)~22日(日) 会場:京都文化博物館 ※月曜休館
 ※第45回特設サイト https://pff.jp/45th/  チケットは発売中