社長からのごあいさつ

ぴあ株式会社代表取締役社長 矢内 廣(Hiroshi Yanai) ぴあ株式会社代表取締役社長 矢内 廣(Hiroshi Yanai)

3ヶ年の中期経営計画の達成に向けて

 皆様には平素よりご高配を賜り、厚く御礼を申し上げます。お陰さまで、ぴあグループの当連結会計年度におきましては、一昨年より3期連続の黒字を達成することができました。当社シンクタンクのぴあ総研の調査では、大規模会場での大型興行の増加、動員数やチケット単価の上昇等により、国内集客エンタメ市場はすでにコロナ禍前を大幅に上回る規模で活況を呈しています。ぴあグループはこうした追い風の中、音楽・演劇・スポーツ・夏フェス等の大型興行の主催、集客イベントのチケット販売、チケッティングビジネスを核としたソリューション事業やぴあカード会員事業の拡大、「ぴあアリーナMM」の堅調な稼働率などにより、取扱高ベースでの売上も約2,700億円規模に達し、連結会計年度で過去最高の水準となりました。また、中期経営計画に掲げた新規事業への戦略的投資の成果も表出し始め、営業利益・経常利益・当期純利益は、いずれも前期実績を大幅に上回り、過去最高を更新しました。一方、コロナ禍による多額の累損は解消にまでは至らず、大変遺憾ながら当期の配当も無配とさせていただかざるを得ない状況です。中期経営計画の最終年度でもある2025年度中には累損も一掃し、6期ぶりの復配を実現したいと思っております。

大阪・関西万博の盛り上がりを追い風に

 中期経営計画では、チケット流通ビジネスを核とした基幹事業のさらなる拡大とともに、経営基盤の"変身"を図るべく、新規事業・サービスの創出と育成も進めてきましたが、利益ベースでは2年目にして当初目標を大きく上回る進捗を辿っております。特に、開催中の大阪・関西万博ではチケッティング業務を全面的に受託しているほか、当社システムを利用した、会員登録不要で、希望の来場日時とゲートを選択するだけの最短ステップで入場できる「EXPO Quick」もリリースしました。同時に、他社に先駆けて、いち早く刊行した万博公式ライセンスガイドブック『大阪・関西万博ぴあ』は、レジャー系のムック本としては、異例の80万部という発行部数に達しており、チケット事業と出版事業の両方を持つ当社の強みが発揮されております。また、9月に開催を控えた「東京2025世界陸上」でも、オフィシャルサポーターとしてチケッティング業務全般を受託しており、70万枚の観戦券の約半数をすでに販売しています。特典や付加価値がセットされたホスピタリティチケット事業も順次収益化が進んでおり、いよいよ変身の成果を勝ち獲る段階に至っています。
 一方、日本初の民設民営の大規模アリーナ「ぴあアリーナMM」は、週末は約1年半先まで予約が埋まる人気ぶりで、ライブホールの「豊洲PIT」「仙台PIT」ともども、高い稼働率で推移しています。加えて2026年には、東京駅直結の「TOFROM YAESU TOWER(トフロム八重洲タワー)」内の劇場(約800名収容)もオープン予定です。併設される複数のカンファレンスホールや会議室も同時に運営し、各施設を連動させることで、エンタメ、ビジネス、ショーケース等の多様なニーズにお応えします。当グループでは今後も、こうしたヴェニューネットワークの拡大を全国に進めてまいります。

サステナブルな文化環境の整備を目指して

 国内で唯一、ライブ・エンタテインメント市場を対象にした「ライブ・エンタテインメント白書」を毎年発行しているぴあ総研では、2022年より「集客エンタメ産業の未来に向けた、社会的意義と本質的価値」について提言するシンポジウムを開催しています。文化・芸術・エンタメ・スポーツの持続的な発展のあり方、さらには社会課題の解決におけるこれらの分野の大きな可能性について議論を展開していますが、第4回目の今年は6月23日に京都で開催するほか、8月の大阪・関西万博でも、未来の教育や社会におけるエンタメの役割を共に考えるパネルディスカッションの開催を予定しています。また、東京藝術大学、龍谷大学とも産学連携協定を締結しました。今年からはサステナビリティレポートも発行(別添)し、エンタテインメントを通じた持続可能な未来への貢献を継続してまいります。

ぴあは若くて新しいチャレンジを応援します

 昨年、第46回目を開催した「ぴあフィルムフェスティバル」では、最年少の14歳を含む18歳以下の監督作品が3本も入選し、入選監督の平均年齢も23.1歳となり、前回の第45回より3歳も若返りました。また、当グループの若手有志によって企画運営されている、新人バンドを応援するライブハウスイベント「Grasshopper」も30回を超える公演を開催しており、大変好評です。パリ五輪でもたくさんの10代のメダリストが誕生しましたが、若者はインターネットを背景に、“個の発露”に手応えを感じ始め、エンタテインメントに「拠り所」を見つけようとしているのだと思います。そうした若者たちがエンタメ市場を下支えしているとも言え、人々がエンタメに心の豊かさを求める流れは、今後も拡大していくものと考えています。これらを背景に、当グループでは、社業を通じてエンタメの作り手と受け手を一気通貫に結ぶ「感動のライフライン」の構築を進め、市場のニーズに応えるとともに、集客エンタメ業界のサステナブルな発展に向けて、人材や文化の育成に注力してまいります。
 なお、ぴあグループは引き続き、SDGs18番目の目標として、“Making Life and Society rich with Art, Culture, Enter-tainment and Sports.”(文化芸術・エンタメ・スポーツで、心豊かな暮らしと社会を。)を掲げ、心豊かな暮らしと社会のために、あらゆる人々の文化的活動を強化・支援することを提言しています。100年企業を目指して、役員・従業員一丸となって歩みを進めていく所存ですので、どうか引き続き温かいご愛顧とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(2025年6月掲載)