社長からのごあいさつ
集客エンタメ市場は、コロナ禍前を遥かに凌ぐ規模に復調
皆様には平素よりご高配を賜り、厚く御礼を申し上げます。お陰さまで、当グループの当連結会計年度におきましては、前年度に引き続き2期連続の黒字を達成することができました。当社シンクタンクのぴあ総研の調査では、国内集客エンタメ市場はすでにコロナ禍前を遥かに上回る規模に復調しています。プロスポーツの盛り上がりや全国の音楽フェスの活況、ドームクラスの大規模な来日公演などが増えたこともあり、取扱高ベースでの売上は2,400億円規模に達し、過去最高の水準となりました。また、チケッティングビジネスを核とした周辺事業も順調に推移し、営業利益は期初想定通り、当期利益は想定を上回る結果を残し、昨年発表した3ヶ年中期経営計画の初年度目標を達成しております。しかしながら、コロナ禍の打撃による多額の累損の解消までには至らず、大変遺憾ながら当期の配当も無配とさせていただかざるを得ない状況です。中期経営計画はこれから2年度目に入りますが、累損の一掃、そして計画期間中の復配の実現に向け、役員・従業員一丸となって目標の必達を目指してまいります。
基幹事業の拡大とともに、新規事業の成長を期して
中期計画の達成に向け、基幹事業であるチケット流通、興行制作、ぴあカード会員、アリーナ運営等の収益拡大と並行し、「デジタルメディア・データマーケティング事業」、「ホスピタリティ事業(高付加価値チケットの販売)」、「グローバル・イベント事業(万博等の国際領域での業務受託)」等、コロナ禍中に準備を進めてきた新規事業群への戦略的投資活動を強化しています。特に、予約も好調な「ぴあアリーナMM」、「豊洲PIT」「仙台PIT」に続き、2025年には、再開発が進む東京・八重洲に竣工予定の新劇場の共同運営も決まりました。当社グループの持つ多様なネットワークを活用し、演劇・ミュージカル・コンサート等を誘致する予定ですが、将来的には横浜・みなとみらいエリアや東京駅周辺エリアを、ブロードウェイやウエストエンドのようなショービジネスの観光拠点として、広く発展させることも目指しています。
また、いよいよ大阪・関西万博の開幕まで1年を切りました。当社ではチケッティング業務を全面的に受託し、その販売から入退場管理までを一元で行えるシステムを提供しています。昨年11月よりチケット販売も開始されましたが、今後は五輪やW杯等での受託ノウハウを活用しながら本番の開催に貢献してまいります。一方、昨年11月にリリースしたサブスクリプションサービス「ぴあ落語ざんまい」は、現在では2000本を超えるラインナップが揃いました。若手からベテランまで、実際の高座での実演映像が見放題となる業界最大のサービスですので、落語ファンの方ならずともぜひ一度お試しください。
経済性と趣旨性の両輪で進みます
「映画の新しい才能の発見と育成」をテーマに1977年にスタートした「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のアワード受賞作が、今年5月より日本航空(JAL)の機内で上映されることとなりました。若手の新人監督たちにとっては、貴重な上映機会が増えることとなります。作品は定期的に入れ替わりますので、フライトの際はぜひお楽しみください。また、映画の未来を拓き、世界へと羽ばたこうとする若くて新しい才能に対して贈られる「大島渚賞」は、今年で第5回を迎え、『遠いところ』で注目を集めた工藤将亮監督に授与されました。今や、PFF出身のプロの映画監督は200名近くに達し、日本の映画界の持続的発展に寄与しています。
また、ぴあ総研では、日本で開催されている全ての興行データを正確に集計し、集客エンタメ市場の変遷を発表し続けています。今では、その分析や予測値が様々なメディアに取り上げられ、世の中の市況と、今後の行方を量る経済指標の一つとして高く評価されています。いずれも収益には直結しない活動ですが、経済性の追求と同時に、こうした趣旨性の体現も当グループの企業理念の核となっています。
私たちは、過去の大震災やコロナ禍などを経て、エンタテインメントが人々を元気づけたり、勇気づけたりする場面を何度も目にしてきました。ぴあグループでは、エンタメは決して不要不急なものではなく、世の中や社会にとって不可欠な存在であることを示すために、SDGsの18番目の目標として、“Making Life and Society rich with Art, Culture, Entertainment and Sports.”(文化芸術・エンタテインメント・スポーツで、心豊かな暮らしと社会を)を提唱しています。ぴあ総研が5月に開催したシンポジウムでは、各界の識者にご参集賜り、SDGsの先をも見据え、集客エンタメがこれからの世の中の「真の豊かさ」の実現や地域活性にどのように貢献できるか、そしてその価値をいかに社会に実装するか、というテーマで熱い議論が交わされました。今後も、社業を生かした当グループならではの社会貢献を続けてまいりたいと思っております。
“感動のライフライン”の構築を目指して
エンタテインメントによる感動は、ひとりひとりが毎日を生き生きと暮らすための、いわば「酸素」のようなものだと私たちは考えています。当グループでは、それらの作り手と受け手、生み出す側と楽しむ側を一気通貫に結ぶサービスを、“感動のライフライン”と呼んでいます。コンテンツの創出からプロモーション、チケット流通、ホール劇場の運営までを一手に担うとともに、文化や人材の育成、業界へのソリューション、地域の活性化等を通じ、集客エンタテインメント産業のサステナビリティ化に貢献してまいりたいと思っています。同時に人的資本経営にも注力し、生産性の向上や残業の削減はもとより、ぴあならではの働き方改革と環境の改善を進め、全社一丸となって企業価値の向上を図ってまいりますので、今後とも、皆様からの温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。
(2024年6月掲載)