社長からのごあいさつ

3ヶ年の中期経営計画を達成し、100年企業へと歩みを進めます ぴあ株式会社代表取締役社長 矢内 廣(Hiroshi Yanai) 3ヶ年の中期経営計画を達成し、100年企業へと歩みを進めます ぴあ株式会社代表取締役社長 矢内 廣(Hiroshi Yanai)

V字回復へ確かな一歩を

皆様には平素よりご高配を賜り、厚く御礼を申し上げます。集客エンタテインメント業界から約8割もの市場を奪ったコロナ禍から時を経て、日本の経済活動も正常化への道を辿っております。コロナの5類移行後の集客制限の撤廃や興行規模の拡大、チケット価格の上昇などが追い風となり、集客エンタメ市場も復調に転じつつありますが、各種物価の高騰や円安の進行など、その減速リスクも看過できません。ぴあグループでも市場回復の好況に気を緩めることなく、引き続き全社一丸となってV字回復に向けた施策に注力しております。
5月に公表した新たな中期経営計画(2023~2025年度)の初年度となる当社グループ上半期の連結業績は、人気アーティストの全国ツアー、ドーム規模の海外アーティストの公演、大規模な屋外フェス、スポーツの国際大会などの大型案件が集中し、取扱高ベースでは過去最高を記録しました。また、デジタル庁のマイナンバーカード利活用の実証実験を受託した「ぴあフェス(PIA MUSIC COMPLEX)」をはじめとする各種主催事業や、『大谷翔平語録』や『森のカフェと緑のレストラン』などの出版商品が堅調に推移したこと、「ぴあアリーナMM」が本格稼働したこと等も伴い、営業利益や経常利益においても期初想定を上回りました。現時点で、通期目標の達成が十分に見込める状況となっています。

中期経営計画を支える新規事業

中期計画の実現に向けては、新規事業の育成・創出も進めています。その一つである「ホスピタリティ事業」では、トライアル商品の企画販売をスタートしました。「NTTジャパンラグビー リーグワンプレーオフ決勝」や「セルティックFC・ジャパンツアー2023」、「FIA世界ラリー選手権(WRC)フォーラムエイト・ラリージャパン2023」など、複数の大規模イベントで付加価値の高い鑑賞プランを提供し、お客様の体験価値の向上をテーマに、さまざまなスタイルのプログラムを開発しています。また、2025年開催予定の「大阪・関西万博」の入場券販売システムの受託業務についても、無事に11月末の発売を迎え、引き続き2年後の本番に向けた準備を続けています。今後も、サッカーやラグビーのW杯、オリンピック・パラリンピックなどの経験を活かし、国際的イベントのチケッティング業務を担いながら、海外との連携の強化も図ってまいります。
また、12月6日から、落語高座の実演映像が月額で見放題となるサブスクリプションサービス「ぴあ落語ざんまい」を開始しました。1,000本を超える多彩なラインナップを取り揃えた、業界最大規模の動画配信サービスで、今後も続々と新作映像を追加予定です。長年のファンにも、あるいは寄席やホール落語のない地方在住のファンの方々にも、広くお楽しみいただける内容となっておりますので、この機会にぜひご利用ください。

社業を通じた社会への貢献も

「映画の新しい才能の発見と育成」を目指して1977年より取り組んでいるPFF(ぴあフィルムフェスティバル)は、お陰さまで今年の開催で45回目を迎え、日本映画界を背負って立つプロの映画監督を180名以上も輩出してきました。今年は557本の応募作品の中から、中野晃太監督の「リテイク」がグランプリに輝きました。PFFが製作から劇場公開までをプロデュースする長編映画製作援助システム「PFFスカラシップ」で作られた作品も、昨今では海外の映画祭で多くの賞を受賞しています。株主総会でご覧いただいた「すべての夜を思いだす」(清原惟監督)をはじめ、今後も続々と公開予定のスカラシップ作品にもどうかご期待ください。
また、東日本大震災の直後から被災地の「心の復興支援活動」を続けてきた一般社団法人チームスマイルは、2022年末をもってその活動を終了しましたが、エンタテインメントを通じた心の復興支援活動の継続が評価され、先般、福島県より県外在住功労者知事表彰を受けました。賞の特性上、私個人としての受賞となりましたが、多くの方々のお力添えとご賛同があってこその活動でした。今後も常に感謝の気持ちを忘れることなく、ぴあは社業を通じて若い世代や新しい才能の応援を続けてまいります。

SDGsの18番目に文化・芸術の必要性を

SDGsは17項目の達成目標を設定していますが、その中には文化・芸術に直接触れた項目がありません。しかし私たちは、エンタテインメントは人々が生き生きと生活するために不可欠なものだと信じています。当社シンクタンクのぴあ総研では、「文化芸術・集客エンタメは、人々と社会をどう豊かにできるのか」と題し、5月31日に第2回目のシンポジウムを開催しました。「SDGsの18番目に文化芸術に関する新項目を」というテーマで基調講演をお願いした都倉俊一文化庁長官からは、「文化芸術というのは人間であるということの証明。人々はこの人類の歴史でもある文化芸術を享受し、人生を豊かに送る権利がある、と規定したい」と心強いお言葉をいただきました。ぴあグループは、“ Making Life and Society rich with Art, Culture, Entertainment and Sports.”(~文化芸術・エンタテインメント・スポーツで、心豊かな暮らしと社会を~)がSDGs18番目の目標として認定されることを目指して活動してまいります。
ぴあは100年企業に向けて、新しい50年の1歩目を踏み出しました。グループ全役員・従業員が一丸となって、集客エンタメ産業を中心とする、“ひとりひとりが生き生きと”した社会の実現に向けて努力してまいります。皆様にはどうか引き続き、温かいご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

(2023年12月掲載)