坂本龍一氏の大島渚監督への"想い"が残された「大島渚賞」

プレスリリース

2023年04月04日

音楽家の坂本龍一さんが3月28日にお亡くなりになりました。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)では、坂本龍一さんを審査員長に据え、2019年より「大島渚賞」を制定しました。本賞は、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする若くて新しい才能に対して、年に1度贈られる賞です。「大島渚賞」審査員長として、献身的に、表現者としての厳しい姿勢と自由であることを示してくれた坂本龍一さんを、私たちは忘れません。深く感謝申し上げるとともに、ご逝去を悼み、心からのご冥福をお祈り申し上げます。

療養中のため第4回の審査に加わっていただくことは叶いませんでしたが、坂本龍一さんの大島渚監督へのリスペクトこそが「大島渚賞」の礎となっています。過去の審査講評の中で、坂本龍一さんが大島渚監督について熱い想いを語られています。審査員プロフィール、ならびに過去の審査講評につきましては、以下のURLよりご参照ください。

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◆大島渚賞と審査員プロフィール
  ⇒ https://pff.jp/jp/oshima-prize/#about

◆第1回大島渚賞(2020年)の審査講評
 ⇒ https://pff.jp/jp/oshima-prize/2020.html

「大島渚という映画人は、常に国家や権力、あるいは歴史、国境というものに翻弄されてきた人々について描いてきた。あるいは常識というものに立ち向かってこられた。また大島さんは映画人でありながら思想家でもあったと思っています。
このすばらしい監督の名を冠した賞にふさわしい人はだれか。それは、いまの日本で考えると小田 香さんしかいないと思いました。小田監督の最新作『セノーテ』は、マヤ文明の洞窟湖に潜って撮影しています。みなさんご存知だと思うのですがマヤ文明は500年ぐらい前にヨーロッパの侵略者によって壊滅させられ、いまは末裔が細々と生きています。そのことについて『セノーテ』は、直接的に表現していませんが、そのマヤのひとたちの500年の苦難の声が画面からじわっと伝わってきます。これは完全に大島さんの思想と通底していると私は感動しています。
大島渚賞はこれから世界へはばたく映画人を選出するという主旨なのですが、小田さんはすでに世界に羽ばたいていまして、もう日本という狭い場所でじたばたしていない。
前作の『鉱 ARAGANE』もすばらしいのですが、『セノーテ』はその数十倍もすばらしいので、たくさんのみなさんに観てほしいです。」

◆第2回大島渚賞(2021年)の審査講評
 https://pff.jp/jp/oshima-prize/2021.html

「もし大島渚賞などという形で大島渚が権威になるのだったら、それこそ大島渚が最も嫌ったことだろう。
だから大島渚に迎合するのは絶対にだめなのだ。そうではなく大島渚を挑発し、批判し、越えていくことこそ最も大島渚賞にふさわしいと言えるのだ。
そのような映画にわたしたちは出会いたい。」

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映画の新しい才能を<発見>する「PFFアワード」、その才能を<育成>する「PFFスカラシップ」、そしてその先、その才能をさらに世界へ<飛躍>させるための賞が「大島渚賞」です。かつて、大島渚監督が高い志を持って世界に挑戦していったように、それに続く次世代の監督を、期待と称賛を込めて顕彰しています。2023年で第4回を迎えた本賞は、第1回の小田香監督、第3回の藤元明緒監督、第4回の山﨑樹一郎監督と、既に3名の気鋭の監督が選出されています。(第2回は該当者なし)

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